屋根付き球場が欲し〜い
新球場建設の真の目的を今一度考えてみる


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かねてよりの懸案事項だった広島駅東側ヤード跡地の利用方法が、とりあえず「新球場建設」という方向に定まりました(アジア屋台村というのはどう考えても「…」ですよね、やはり)。もともとその予定で土地を先行取得していたんだから、今になって「どうしようか」と迷う方がおかしな話で、当初の予定通りとなって一安心です。
「球場を造る」と決心したなら、新球場を建設する目的をしっかりと考えなければなりません。「広島の誇りとなる球場を建設する」というのも理由の一つかもしれません。でも、大金を使って建設するのであれば、できるだけ多くの人に球場に足を運んでもらいたいものです。銭金の議論も大切な事かもしれませんが、少々高くついたとしても「やっぱ新球場はいい」と万人が認める新球場にしたいものです。
広島市民球場は、ご存じの通り広島市の旧市街地のど真ん中にあります。すぐそばには、世界遺産の原爆ドーム、中四国一(ということになっている)繁華街の紙屋町、八丁堀、そしてこの春(2001)に開業した地下街「シャレオ」があります。そして、真横には広島バスセンター、正面には路面電車、ちょっと歩けば新交通システム「アストラムライン」と、公共交通機関もこれ以上ない充実ぶりです。ということで、その立地条件は、広島市内においては「抜群」ということになります。
だのになぜかお客さんが入りません…。ゴールデンウイーク、お盆、そして土日がらみの巨人戦をのぞけば、1万人がやっとといったところ。そして大抵の場合、「満員御礼」となるのは、まずライト側外野席。そして右中間席、バックスクリーン右横という順番で席が埋まっていきますから、入場者1万人(公称)では、内野2階席、3塁側内野席はガラガラ、1塁側内野席はパラパラという、「いつもの」状態になってしまいます。
このような状態では、東京や名古屋、大阪のプロ野球ファンや、プロ野球を目指す野球選手達が、「広島市民球場には客がいない」=「カープは人気がない」という固定観念を持ってしまうことは致し方ないことかもしれません。でも、東京圏は1000万人以上、名古屋、大阪でもどんなに少な目に見積もっても500万人以上の人口がいます。一方の広島は、広島県民老若男女全員をかき集めても300万人になりません。そのへんを考慮に入れれば、毎試合とりあえず1万人以上(公称)の集客力があるということは健闘に価すると考えてもいいように思います。
でも、ここで私が「健闘しているんだ」といくら力説しても、現実問題として観客動員数はよくて12球団中11位、ちょっと調子が悪いと最下位と、セントラルリーグに所属するプロ球団としては、客観的にみて、「もうちょっとなんとかならないものだろうか?」と考えさせられてしまいます。地方球場での主催試合を含めてカープの年間主催試合を全70試合、総入場者数を110万人(1試合平均約1万5千人、これはちょっと多いかも)とし、一人が払う入場料を2000円(ちょっと安めか?)と仮定すると、試合での総売り上げは22億円。毎試合毎試合満員御礼の巨人が55000人×70試合=385万人。入場料を2000円としても77億円!。軽く3倍強です。東京ドームでの必要経費は市民球場よりも遙かに高くつくといっても、残念ながら売り上げは雲泥の差。放送権料や広告収入を加算すれば、なるほど「企業努力」と称して、逆指名、FAと、お金のかかる補強をばしばしとできるわけです。しかも、読売グループがバックについているのですから、怖いものはありません。
と、まあ巨人と比較しても仕方ありません。巨人のことはおいておいて、カープのことを考えましょう。ここ数年の実績は、100万人ちょっと(公称)が精一杯といったところです。カープがシーズン終盤まで競った優勝争いを続けでもしない限り、10万人単位の上乗せはちょっと無理でしょう。しかもこれは一過的な現象とするほうが妥当です。となると、新球場建設にかかった費用の返済が本当にできるのかどうかという不安がよぎります。しかも新球場建設予定地は旧市内で広島駅に近いとはいえ、いまの市民球場に比較すれば格段に立地条件が悪い場所です。しかもカープにはいくらでもお金を出してくれる親会社はありません。今話題になっている「カープが新球場の経営に参加する」という案は、不安要因が多すぎて一ファンとして諸手をあげてとても賛成できるような気分にはなりません
しかも、カープが提案し、ずいぶんと乗り気になっているのが、「複合施設付きオープン型レトロ球場案」。ホテル、ショッピングモールとオープン型総天然芝球場を組み合わせるというもの。いわゆるアメリカの「ボールパーク」。「1日中楽しめる施設」をめざしているみたいですが、果たして広島県民がじゃんじゃん来場して楽しんでくれるのでしょうか???
今一度、今の広島市民球場の立地条件を思い出してみましょう。近辺には、メ○パ○ク広島、リー○ロ○ヤ○ホテル(巨人の定宿)等のホテル、そごう、広島センター街、地下街シャレオ、本通り商店街等の「ショッピングモール」、そして交通機関の利便性は最高と、カープの目指すものがすべて整っています。だというのに、入場者数は頭打ち。市民球場の使用代金はタダ同然。もちろん市民球場建設代金の負債は0。こうやって考えていくと、カープの提示した案というのは、負債を負わねばならない分、リスクが大きいように思えます(しかもペイできる可能性は低い)。
だからといって、決して盛り上がっている機運に水を差す気はありません(といってももう遅いかもしれませんね)。もちろん私も新球場が見てみたい。でも、その新球場がカープの屋台骨をぐらつかせ、にっちもさっちもいかなくなって、最悪、身売りってことになるんじゃないかってことを危惧しているわけです。「そんなことになるくらいなら、たとえ狭くても、古くても市民球場でいいじゃないか」って思いです。
少なくとも、カープがカープとしてお金を借りなければならないような新球場建設案には絶対反対です(十分な蓄えがあって、それを使うというなら話は別ですが)。たとえ利子が安いといっても、借金は借金。カープは純粋なプロ野球チーム。野球で儲けるならいいですが、副業に手を出してその副業が本業の首を絞める姿を見たくはありません。でも、ここ数年の内に新球場は建設されることになるでしょう。カープの案に反対するなら、建設を前提としてそれに対する代案を出すというのが筋というもの。
まず第1として、カープは一切新球場に対する金銭的負債に関与しないこと、これです。「自分たちが使う球場に金を一切出さないというのは、今現在の景気動向を勘案するとたいへんマズい」という意見もあるかもしれませんが、ハードウエア(球場)を整備して、ソフトウエア(カープ)がハングアップしてしまったのでは元も子もありません(その可能性は低いかもしれませんが0ではありません)。「じゃあ誰が建設費用を出すのか?」って話になりますね。ここで、「カープは市民球団。だから、市や県や地元企業が金を出すべき」っていうのは、むちゃくちゃ乱暴な案でしょうねぇ…。それができないからこそ、カープが一枚かんで金を出すって話になっているんでしょうから…。う〜ん、忌むべき抽象的な循環論に陥ってしまってます。でも、その計画でもカープが事業主体となって総事業費(300億円ぐらいらしい)の半分を出すって話でもないのでしょうから(おそらく)、カープが降りても許してもらえるんじゃないでしょうか?甘いか…?。う〜ん、全然代案になっていない…。いつぞやの某大学教授に対する私の反論(今現在は削除)を読んだ人は、「こいつ何言ってんだ?」て思うでしょうなぁ…。でも、誰かに頼るしかないのだと思います。今さら、「たる募金」でもないでしょうし…。
第2に、新球場には必ず屋根を付けて全天候型の球場にすること。世論は、総天然芝オープン型レトロ球場案支持に傾いているようですが、やはりこのタイプの球場は日本にはなじまないと思います。こと、外野席が無い、あるいは極端に小さいような「変形タイプ」は、容姿は日本初で目新しいかもしれませんが、外野席から座席埋まる広島ではそれだけで客が減るような気がします。内野席の入場料を今の外野席なみに下げるというならいいかもしれませんが、新球場を建設してそのような価格設定になるとは到底考えられません。最近、忌み嫌われている人工芝ドーム型球場ですが、やはりプロ野球は興業優先。「雨で中止でローテーションが楽になる」、「人工芝は選手の体によくない」、「野球は屋外でやるものだ」ってこともわかりますが、天気まかせの興業である限り入場料の払い戻しという作業が発生しますし、弁当屋さんや球場内売店などの関連業種が振り回されたりで、商売という観点からは「やはり雨天中止はあるべきではない」って思います。また、観戦ツアー、修学旅行等の商売も不確定要素が高すぎるためなかなか成り立たないしでしょうし、それよりも何よりも、観戦を楽しみにしていたファンががっくりしてしまうことになります(そうそう「スライド観戦」ってこともできないでしょうから)。また、「広島は雨で中止ってことがほとんどないから屋根は必要ない」って意見も聞きますが、中止にならないだけの雨中ゲームっていうのは結構あったりしますよ。雨が降っている、あるいは降りそうだという日には、球場へ行くのには二の足を踏んでしまいます屋根付き球場は建設コストがかさむし使用料が高くなって、その分を入場料に反映させなければ成り立たないってことになるのでしょうが、屋根があることによって収入が安定するっていう点にも目を向けるべきだと思います。「ドーム球場あるいは屋根付き球場を建設して、カープが試合しないあとの300余日はどうするんだ」って話もありますが、総天然芝の球場こそ使い道がないような気がします。芝が傷むから一般の草野球チームにはおいそれとは貸し出せないでしょうし、大学野球、高校野球に貸し出したとしても収益はあがりません。人工芝ドーム球場なら、コンサートとか商品展覧会とか、使ってくれる人もあるように思えます(期待は薄いですが)。スライド屋根式天然芝球場にすれば、ウルトラCとして、サンフレッチェ広島の試合開催も可能かもしれません(ほとんど可能性はありませんが、さっぽろドームの例もありますし)。
第3に、新球場には大きな駐車場を併設すべきと考えます。どうのこうのといっても、最近の家族足は「車」です。一等地たるべき駅前のデパートが廃れ、郊外型アウトレットショッピングモールが大流行。駐車場がないデパートは今時流行りません。たとえ新球場が広島駅のそばにあると言っても、駅から800メートル「も」離れています。アメリカの球場の周りには大きな駐車場があるではないですか。百歩譲って、アメリカに習ってオープン型レトロ球場を建設するのであれば、巨大駐車場も真似するべきであります。万が一ショッピングモールを併設するようになったとしたら、駐車場は絶対必須であります。「駅に近いからお客さんがJRを使ってやってくる」ってことは、土日祝日に限って言えばまずあり得ません。ただし、そのようなものを作ってしまったら、駅周辺が大渋滞してしまうことも必至。そして試合中のアルコール類の販売やアルコール類の持ち込みも厳禁になることも必至。何かが便利になると何かが不便になるということです、やはり。
と、まあ書きたいことを書かせてもらいました。私個人としては、やはり屋根付き球場があってほしいです。たとえ、「新鮮味に欠ける」とか「採算性がない」とか言われたとしても広島にふさわしいのは、屋根付き球場だと思います。新幹線から必ず見える屋根付き球場。お金の算段なんとかつけて、作ろう広島に屋根付き球場を!!は〜ぁ…。タイミングが悪いなぁ…。もう少し前なら、何の迷いもなく屋根付き球場ができていたでしょうに…新球場に屋根を付けないと100年の禍根を後世に残すことになるような気がしてしょうがありません。一度作ってしまった施設には、後から屋根は付きません。ビッ○アー○で実証済み。万が一、野球ワールドカップが行われるようになったとして、「屋根がない球場では開催不可」となってもしりませんよ〜。なんてことはないか、やっぱり。


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