絶対屋根を付けましょう!
折衷案でもなんでもいい、新球場に屋根は絶対に必要です
■ | 1998年に購入したヤード跡地の特例措置が2002年度で切れ、年間3000万円の税金が一気に2億円以上に跳ね上がってしまうということで、もう待ったなし。「先送り、先送り」で先送りされてきたヤード跡地問題が一気にヒートアップしてきました。 |
■ | もともとのきっかけから振り返ってみると、そもそものきっかけは「市民球場の老朽化問題」。何度かの改装を経てきた広島市民球場でしたが、築50余年を経てそれも限界に達し、「古い、汚い、狭い」ということから、90年代初頭ごろ(もしかしたら中頃?)から新球場待望論が出てきたように思います。そもそも、市民球場は1994年の広島アジア大会のために2年がかりで大幅にリニューアルされて、「これがあの市民球場?」って思えるぐらいにずいぶんとこぎれいな球場になっていたのですが(外観は)、かのバブル景気の幻影にに老いも若きも踊っていた頃だっただけに、「広島にもやっぱりドーム球場が欲しいよね」、「うん、そう、そう」って感じでいつのまにやら「新球場建設」の機運が盛り上がり、ヤード跡地が売りに出た瞬間、「ちょうどいい、買っとけ、買っとけ」って感じで跡地を取得したわけです(たぶん)。この時点では、おそらく誰しもが「あの場所にはドーム球場が建つ」と思っていたはずです。ところがご存じのとおり、バブル崩壊後の経済情勢は転落の一途をたどり、一体いつになったらこの不況下から抜け出せるのかについては、どんな経済学者をもってしても五里霧中の状態。「広島にもドーム球場を」って話は、「そんな金どこにある?」ってこことになり、先行取得した土地だけが宙ぶらりんのままとり残されてしまいました…。 |
■ | ところが最初にも書きましたが、特例措置切れが間近に迫り、土地をどうにかしなければならない状況下に追い込まれてしまいました。もちろんすでにドーム球場建設なんて夢のまた夢。最終案にとりあえず残されてはいますが、「高すぎる」、「今さらドーム球場を造ってもしょうがない」といった意見が支配的で、ドーム球場ができるなんて誰も思っちゃあいません、おそらく。私個人としても、ドーム球場だけは無理だろうと思っていますが、2、3意見を言わせてもらいます。 |
■ | その@:確かに今、日本中を見渡してみると、札幌、東京、名古屋、大阪、福岡にたいそう立派なドーム球場があります。でも、だからといって、他の場所と違うもの、すなわち、「アメリカンスタイルのボールパークみたいな球場を造れば珍しいからいいんだ。安くすむし」という考え方はちょっと違うんじゃないかなとと思います。球場に足を運ぶ人は野球を見に来るんであって、球場を見に来るわけじゃあないはずです(最初のうちは多少あるかもしれませんが)。確かに、アメリカンスタイルの球場はゆったりしていていいかもしれませんが、新球場には機能的な立派さを求めるべきであり、それをおろそかにしてまで外観に凝る必要はないと思います(「おろそかにはしない」ということになっているのでしょうが)。両立させることにより建設費がかさむことになってしまうのであれば、それこそ本末転倒です。そのA:費用対効果の問題は別にして、ドーム球場が敬遠される最大の理由は人工芝ってことになってます。「人工芝は足腰に悪く選手寿命を縮める」って話をよく聞きますが、人工芝でプレーしたことがない私としては今ひとつ実感できません。皆が皆、「悪い、悪い」っていうもんだから、私も「悪いんだろうなぁ」という認識があるにはありますが、現在土のグランドを使っているカープの選手にあれだけけが人が多い理由が人工芝だけにあるとは思えません。「フランチャイズまで人工芝になると今以上に悪くなる」って意見を否定はしませんが、春先の花冷えの時期、梅雨時のジメジメの時期、夕凪のある暑い盛夏、晩秋の底冷えの時期に露天のグランドで連戦しなければならない事にこそ問題があるようにも思えますが、いかがなものでしょうか?「ドーム球場は季節感がない」というのも本当でしょうけれど、「年間を通じてほぼ一定した環境で試合ができるし観戦も楽」って利点も侮れないと思います。そのB:おそらく総天然芝ということで決着するんでしょうけれど、野球用の総天然芝球場(内野も芝)って、野球にしか使い道がないですよね。カープの試合はどう大目に見積もっても年間60試合程度。「ドーム球場を造っても稼働率は50%以下で採算が取れない」って試算が出てましたが、野球専用球場にしてしまって残りの300日余りはどうするんでしょうか?現在の市民球場でさえ、「グランドが傷む」という理由で一般の人にはほとんど貸し出しがされていないし、県営グランドの芝フィールド(サッカー場)は一般県民のイベントでは立ち入り禁止です。芝生というのはそれだけデリケートなものである(らしい)から、「300日余りは芝の涵養」ってことになっちゃうんでしょうけれど(草野球立ち入り禁止)、それこそ無駄になってしまうんではないでしょうか?サンフレッチェが試合できるようなフィールド構造になるのであれば救われるのですが、すでに2カ所も立派なピッチがあるし、いまさら3つ目のサッカー場を造ってもしかたないですよね。人工芝であれば、なんやかんやとイベントを誘致することも可能かもしれませんが、露天の人工芝ではそうもいかないでしょうし…。ドーム球場をいまさら擁護してもどうにもならないのでここらで止めます。 |
■ | 昨年の春から、「なんとかしなければならない」と言い続けて、このせっぱ詰まった時期になっても結論が出ないほど難しい問題であることはよくわかります。とはいえ、昨秋ごろからの報道を見るにつけ、天然芝球場が確定路線であることは見え見えです(苦笑)。一番の理由はカープ球団が球場経営に乗り気だからでしょう。問題は、屋根をつけるかつけないかの結論が出ていない点に集約されると思います。市民アンケートの結果では、天然芝球場が圧倒的支持を得ている反面、屋根の有無についてはほぼ半々。天気一つで今日の予定が左右されてしまうっていうのは誰だっていやですし、ビッグアーチに屋根が無かったばっかりにW杯サッカーの会場を辞退しなければならなかった苦い経験を一部市民は忘れてはいません(笑)。興行的には雨天中止がない方が絶対にいいと思うのですが、なぜかカープ球団は「屋根はいらない」って態度を取っているらしく、その点のすりあわせができないばかりに空転を続けているのが真実だと思われます。最大の理由は金銭面らしいのですが…。 |
■ | もし新球場に屋根をつけないのであれば、なんでわざわざ新球場を造る必要があるのでしょうか???こればっかりは理解できません。「可動式の屋根は建設費が高くつくから必要ない」っていうのが最大の理由なんでしょうけれど、だったら、「市民球場の内野に芝をひけばいいじゃんか」ってことになりはしませんか?おっと話がそれました。球場経営にまで手を染めるのであれば、雨天中止が無くなる方が採算性が高くなって絶対にいいと思うんですが…。ヤード跡地は確かに広島駅のすぐそばにありますが、駅から歩くとなると結構な距離があります。近辺に駐車場は皆無ですし(作るスペースも皆無)、もしかりに球場に隣接して大駐車場を作ったにしても(それはないでしょうが)、周辺の道路事情は広島市内でもほぼ最悪ですから大渋滞間違いなし。となると、マイカーで近寄るのははほぼ不可能。さらに、現市民球場に比較してバスの便も悪ければ路面電車もなし、アストラムラインの始発駅からは駅から公共交通機関でゆうに15分はかかるし、さらに雨が降れば観戦はおじゃんとなるのであれば、現市民球場に比較して観客動員数が恒久的に増えるとはとても考えられません。位置的に「仕事帰りにちょっと観戦」ってことは、JRを使って通勤している人以外はまず不可能ですし、「超立派なアメリカンスタイルボールパークが出来たというのに閑古鳥」って可能性はかなり大きくカープ球団の経営を大きく圧迫しかねません。せめて可動式の屋根でもついていれば、「雨が降っても野球は見得れるから今日は行くぞ」、とか、「今日は雨が降りそうだけど屋根が閉まるところを見れるかもしれないし、球場に行ってみるか」って観客が増えるかもしれません(苦笑)。現在の財政状況で可動式の屋根まで付けるというのは大変だと思いますが、お金が無くてすぐにはつけれないにしても、可動式屋根を付けようと思えばすぐ設置できるような設計で建設すべきであると思います。希望としては、最初から屋根のついた球場であるべきなのですが…。「ああ、あの時屋根を付けておくべきだった」とつくづく思う時がすぐ来るのは火を見るより明らかなだけに、この点については熟慮を求めます。大リーグのボールパークだって、マリナーズのセーフコフィールドのように可動式屋根が設置されている球場があるじゃないですか。屋根がない露天型ボールパークがある土地は、もともと屋根が必要ない気候である点をしっかりと認識すべきです。 |
■ | なんでもかんでも「アメリカに右ならえ」というのはいかがなものでしょうか?「今アメリカでは人工芝ドーム球場をやめて昔風のオープン型球場が主流になっている」というのは事実でしょうが、だからといって、そっくり同じものを広島に建設するっていうのはそれこそ個性的ではないように思われます。@「総天然芝球場は綺麗」という点については確かにそうですし、A「選手が間近に見れる」、B「観客席とグランドが近いので迫力が違う」っていうのもわかります。でも、A、Bについてはアメリカでこそ成り立つ話であり、内野フェンスがなくグランドレベルと同じ高さの内野席っていうのは日本ではやはりそらえごとでしょう、残念ながら。もともと市民球場のフェンスは低かったのですが、ファールボールに対する危険防止策(とファンのモラルの低さ)から高くなってしまった経緯がありますから、それをいきなり撤廃することはまず不可能でしょう、やはり。それと、あれこれと出されている球場の完成予想図では内野席が2総二階となっているものが多いみたいですが、今でさえ2階席が埋まることがない事実をもう少し考えに入れるべきじゃあないかなと思います。観客数32000人であんな大きな2階席を作ってしまうと、外野席が小さくなってしまうことは明らかです。しかも、アメリカの球場にありがちな、どう考えても機能的とは思えない左右非対称な構造までまねてしまうとなると座席数がますます圧迫されてしまいます。現在の内野席と外野席の入場料の格差を新球場ではもっと小さくするっていうのならわかりますが、おそらく格差は広がるでしょうね。となると、熱狂的な外野席スタンドのファンが入るべき余地がなくなってしまいます。「トランペットや太鼓などの鳴り物をがんがんとうち鳴らすような応援はこれをきっかけに無くしてしまうべきだ」って意図があるのかもしれませんが、いいにつけ悪しきにつけ、それこそが伝統の「広島らしさ(賛否両論はあるでしょうが)」であるだけに、もう少し熟考の余地があるように思えます。それはそうと、鳴り物付きの応援で思い出しましたが、ヤード跡地は現在の球場に比較して、遙かに住宅街に近い場所に位置しています。だというのに、そもそも近隣住人との話し合いはすんでいるんでしょうか?「何ができるか決まってもないのにそんな交渉はできない」って論理もわかりますが、決まった瞬間、住環境の悪化を危惧した付近住民が球場建設反対運動を行うって茶番だけは避けたいものですね。屋根があれば、騒音防止効果もあるように思いますけどね。 |
■ | それよりも何よりも、新球場建設案が加速した理由というのが、「カープ球団が球場経営に乗り気」ってことにあるそうですが、はたして大丈夫なんでしょうか?球場に隣接して、ホテルとかショッピングモールを建設するという案もあるらしいのですが、あのダイエーでさえ失敗した複合施設の経営を、今まで何の経験もないカープ球団がやって大丈夫なんでしょうか!?いつぞやの新聞記事に、「商業施設を付置したばあいの総利益約30億円」って景気のいい数字がでてましたが、確かにそれが本当にクリアできるなら万々歳です。現球場での総入場者数が約100万人、入場料を一人あたりが2000円支払ったとしてもそこからの収入はやっと20億円ですから、その1.5倍を付置施設から得られればこれほどうれしい話はありません。ただ、駅から中途半端に離れた位置にそのような施設を作って、はたしてお客さんは来てくれるんでしょうか?入場者を見込んで「ホテル」って言っているのかもしれませんが、中止があり得る球場でパック客が見込めますか?この点からも、「屋根はいらない」ってことが理解できないのです。ショッピングモールにしたって、先ほど述べたとおり近隣の交通事情は最悪なだけに、どれだけのお客さんが来てくれるのか、全くもって「?」です。それに2年後にはヤード跡地の近くのキリンビール工場跡地に巨大なショッピングモールができるし、海沿いの県有地にもアウトレットモールができます。どのようなテナントを誘致する気か知りませんが、少々のことではまず成功はあり得ないように思えて仕方ありません。それこそ、「他にいくらでもあるものを今さら作って何になる?」ってことになりはしませんか?やるとなればもちろん大繁盛して欲しいのはやまやまですが、失敗の可能性がきわめて高い他業種に手を出して、カープ球団自体が身売りの憂き目にあう姿だけは絶対に見たくありません。広島のような独立採算の球団は、本業の野球にこそ専念すべきです。 |
■ | それはそうと、新球場の建設費(オープン球場の場合340億円)って、誰が出すことになっているんでしょうか?市は土地を貸すだけで球場本体の建設費用を出さないってことらしいし(屋根分は出すかもしれないらしいが)、カープがすべて払えるとも思えません。「民間企業の出資で」ってことになっているみたいですが、今のような不景気なご時世にこんな大金をポンと出せる企業なんて本当にあるんでしょうか?カープ球団が借金するってことになるとしたら、担保は一体何?カープ自信!?それはあまりにも危険な賭でしょう。お金の問題って、意外な盲点かもしれません。カープ球団としては、おそらく何らかの確信があってこそのことなんでしょうけれど、事業の利益の試算ほどあてにならないものってこの世にありません(苦笑)。ある経済学者が言ってました。「利益半分、建設費2倍」と。つまり、試算上、30億円の利益ってことは15億がいいとこであり、340億ってことは680億ってことになりますね(これほどにはかさまない?)。もう少し踏み込んで言えば、「10年後には黒字転換」ってことは20間は赤字覚悟って事になりますよね(ちょっと強引)。 |
■ | もちろん「新球場建設なんて止めてしまえ」って言う気はさらさらありません。他チームに誇れる日本一立派な球場ができるにこしたことはありませんから。ただ、「市民球場をどうするか」って議論をほとんど行わず、なりゆき上建てることにしたドーム球場が資金的に暗礁に乗り上げたからといって、カープが提案した総天然芝球場案に渡りに船で便乗してしまうというのは、あまりにも危険が多すぎるような気がしてしょうがありません。何度も書いたように、本業以外で資金繰りがつかなくなってカープが無くなってしまうっていうのが一番怖いのです。新球場建設で入場者が倍の200万人になるということはまずないでしょうし、逆に100万人割れの可能性が方が大きいように思えるだけに、慎重な判断が必要な気がしてなりません。「あんたは悲観的すぎる」って言われるのはわかっていますが、「やっぱ市民球場の方がよかった」ってなる事だけは避けたいですよね。ここ数年のうちに新球場ができるのは間違いないでしょうが、どうせ建てるのであれば、この際思い切って立派なものにしておくべきであるように思います。どんなことがあっても、絶対に屋根は付けておくべきです。 |
■ | さて新球場が建ったとして、今の市民球場はどうなるんでしょうかね。流れから行けば撤去ってことになるんでしょうが、「市民球場」なだけにそのまま残して、もっと広く市民に開放してもらいたいものです。バブル真っ盛りのころなら、「跡地を売ってドーム球場の建設費に充てる」となっていたでしょうけど、今ではまず無理でしょう。「特定の私企業に税金を投入することはできない」ってことはわかりますが、広島東洋カープって、まず間違いなく広島を代表するブランドのはずなわけで、もう少し大切にしてもばちはあたらないようにも思えます。地元にプロ野球球団があることって地元にいるとあまりありがたさはわかないかもしれませんが、いったん手放してしまうと二度と手に入らない超貴重なソフトウエアであることにはまず間違いはありませんから。 |